- 悩みはあるようだが相談してくれない
- 子どもが何を考えているのか分からない
- 最後にはいつも喧嘩になる
子どもが思春期にさしかかる頃、子どもとの関係性に悩むことが増えてきます。
子どもから悩みや不安を聞いていると、良かれと思ってアドバイスをしたり、自分の経験を話したりしがちです。しかし、これが実は子どもとの信頼関係を作るうえで障害となることがあります。
また、相談された内容がショックで自分の感情に振り回され、お子さんが気持ちや考えを素直に表現することをためらうようになることもあります。
そこでここでは、精神科の医療現場でも使われている聞く技術「傾聴」について説明します。
これを読んで実践すれば、子どもとの絆を深め、悩みを上手に聞けるようになったり、子どもの自己肯定感を高める接し方ができるようになったりします。
最後にはエッセンスをまとめたpdfを用意しているので、ダウンロードして何度も見返してみてください。
小難しい心理学的な考え方よりも具体的なやり方をお伝えしていきますので安心してくださいね
傾聴とは
アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャースが提唱したカウンセリング技法の一つです。積極的傾聴法、Active Listeningなどとも言われています。
相手の発言に対して、判断や評価をせず、気持ちに共感しながら、なぜそう考えるようになったのかを質問していくことで、徐々に話し手の考えが整理され、納得の行く結論にたどりつけるようになります。
また、「気持ちを理解してくれた」「話を聞いてくれた」と感じ、深い信頼を築くことができます。
傾聴のやり方
傾聴の意識してほしいポイントと避けてほしいことについて解説します。
その前に、日常生活でありがちな傾聴を使わないコミュニケーションを見てみます。
ただいま
(洗濯物を取り込みながら)おかえり。今日はどうだった?
(仏頂面で)今日、学校で注意された
え、何したの?!
廊下、走って、、、
そりゃ走ったら怒られるよね。ちゃんとルールは守らないと。
・・・もういいよ!
話を聞く準備
話を聴くためにいちばん大切なのは、子供に対してしっかりと注意を向けることです。スマートフォンやテレビ、家事をしながらではなく、子どもの目を見て話を聞ける環境を作ります。これによって子どもは自分の話を聞いてくれる、大切にされていると感じ、安心して話すことができます。
意識してほしい3つのこと
傾聴を使って話を聴くときには次の3つを意識してみましょう。
① 気持ちに着目する
子どもの行動よりも、その後ろにある気持ちに目を向けてみましょう。
ついつい行動の方に目が言ってしまいがちですが、行動に着目してしまうと「何を注意されたの」「それはしょうがないよ」と子どもの気持ちを無視して話が進んでしまいます。そうすると、子どもは「話を聞いてくれなかった」と感じ、ネガティブなことについては相談せず抱え込むようになってしまいます。
子どもが自分から気持ちまで話せないときには、「大変だったね」などのねぎらいの言葉や子どもの雰囲気から「不満そうだね」などと問いかけてみるのもいい方法です。
② 言葉を繰り返す
気持ちを見つけることができたらその言葉をそのまま繰り返します。子どもの気持ちを拾い上げて言葉にすることで、子どもは自分の気持ちを受け入れてもらえていると感じることができます。
例えば、「学校で注意されてイライラした」と話されたときには、「そっか。イライラしたんだね」と気持ちに対する共感を言葉にします。
③ 開かれた質問をする
子どもが話した内容に対して、興味を持って開かれた質問をし、話を深めます。そのときの子どもの状況が頭の中で想像できるように質問するとよいでしょう。
開かれた質問とは「はい」「いいえ」や「教室」「昼休み」など一言では答えられない質問です。「何があったの?」「それからどうしたの?」
例えば、先の例では、「どんなことがあったの?」といった感じです。①と組み合わせると「イライラしたんだね。どんなことがあったの?」と話を進めることができます。
避けてほしい3つのこと
傾聴にはできるだけ避けてもらいたいポイントもあります。これらをしてしまうと、意識してほしい3つのことができていても、話が途中で終わってしまったり、相談しにくくなったりします。
① 善悪の判断をしない
善悪の判断をしてしまうと、子どもをどう教育するかという考えでいっぱいになってしまい、子どもの気持ちに気付けなくなってしまいます。子どもは、興味本位でしてしまったり、子どもなりの理由があったりします。話を聴く時点では気持ちや背景を聴くことに集中しましょう。
人を傷つけたり、ものを盗んだりなどの許すことができない行為については、話を聴いたうえで、行動に対してしっかりと注意・指導しましょう。話を聴いていくなかで、子どもから反省できることも多くあります。
② アドバイスや指示を控える
子どもが悩んでいるとついつい解決策を言ってしまいたくなりますが、傾聴ではそれをぐっとこらえましょう。
子どもの心のなかでは、本人なりの気付きや答えを持っていることも多くあります。子どもの成長や自己肯定感を育むためには、本人が発見することが大切です。直接的なアドバイスが多すぎると、自分で行動を考える力が育たず、正しい答えはなんだろうと周囲の意見ばかりを気にしてしまう様になることもあります。
また、思春期になると、親からのアドバイスに対し、無条件に抵抗してしまうため、望ましい解決にたどり着けないこともあります。
子どもから意見を求められたときには、自分の考えを伝えても大丈夫です。そこからさらに子どもがどう考えたか尋ねてみましょう。
③ 自分も無理をしない
子どもの話をうまく聴くためには、自分にも余裕がなければなりません。熱心な親御さんほど、話を聴かなければと頑張ってしまいます。気持ちの余裕がないときは、聴いている側がイライラしたり、落ち込んだりしてしまいます。
子どもはこちらの表情や声のトーンも敏感に察知します。話を聴いていても、怒っている様子や落ち込んでいる様子が伝わると、子どもは安心して相談できなくなってしまいます。
余裕を持つためにも自分の生活や趣味の時間を確保したり、自分だけの相談先を持っておいたりすることが大切です。
話を聴くときには、自分の心を「話を聴くモード」に切り替えてみると、うまくいくこともあります。
傾聴のやり方まとめ
傾聴を使った例
それでは傾聴のポイントを抑えた会話の例を見てみましょう。
ただいま
(洗濯物を取り込みながら)おかえり
(家事が一段落して)今日は学校どうだった?
(仏頂面で)今日、学校で注意された
なんだか不満そうに見えるね
そう、すっごいイライラした
イライラしたのね。どんなことがあったの?
教室移動で忘れ物しちゃって、間に合わないと思って走って取りにいったんだ。他の子も走っている人いたけど、自分だけ注意されて、腹が立ったよ。
他の子も走ってたのに自分だけ注意されて腹がたったんだね。それからどうしたの?
そのあと呼び出されて、担任の先生にも注意されたよ。それから謝って終わったけど。
お、不満だけど、謝ろうと思ったんだね。すごいじゃん。
まあ、走ったのはしょうがないからね。
傾聴をベースに話をしていくと、子どもは自分の気持を受け入れられていると感じますし、本人なりの振り返りもできるようになります。
最後には、望ましい行動に注目するスキルを使っています。望ましい行動を見つけたときには、積極的に注目してあげると、その行動が増えていきます。ここでも、行動そのものよりもそう思った考えの方を褒めてあげると効果的です。
さいごに
私たち親も一人の人間ですし、子どもも一人の人間です。怒ってしまうこともありますし、話を聴く時間が全然とれないときもあります。会話のスキルを使ったからと言って、例のように毎回うまくいくわけではありません。
しかし、傾聴をつかって話を聴く時間を作ることで、これまでよりも少しだけ、親子の絆が深まります。10回やって1回うまくいけば、「やった!」と思って、試していただければと思います。
最後にこの記事のエッセンスをまとめたpdfファイルを用意しています。見返しながら実践していただけると嬉しいです。
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